友達文庫 no.2

 山の絵が行き詰まっているとことろに友達から本が届き、全てを後回しにして読んでしまった。

 

 「ラダックの星」中村安希 

著者は「インパラの朝」で開高健ノンフィクション賞受賞。前回は2年の間に47カ国を放浪する話だったが、今回は北インドのラダックに星を見に行く話である。

 星は砂漠の方が綺麗に見えるのに、なんで山なんだろう?と気になって手に取ったら、一晩で読んでしまった。ストーリーは著者の青春時代、同郷の友人の死と並行するように展開していく。

 

 山に入ると自分の内面と向き合うことになり、家族や友人を含めていろんな事柄が縦横を織り成す糸のように過って行く。人との関わり合いの中で物事を選択して生きているのだと思う。

 友人を思い出した。高額なエベレストの登山費用に疑問を持っていたとき、闘病中の若い友人に相談した。「登山費用はもっと有効なことに使うべきだろうか?」と。彼女は「いまさら、いい人になってどうすんの?」と即答した。そうだ、登りたいのは私なのだ。理由をつけて躊躇しているのを見透かされていた。

 そして、2004年3月中旬にネパールに発った。現地で登山準備をし、6000mのプレ登山を終え、4月、チベットサイドのベースキャンプに入った。高所順応も順調に進み、ABCキャンプ(6300m)に入ったある日、彼女の夢を見た。

 私たちは新緑の大通り公園を歩いていた。彼女の長くまっすぐな髪の間を爽やかに風が通り抜けて、私は嬉しくて「こんなに元気になるとは思っても見なかった!」と笑ったところで目が覚めた。

 

 エベレスト登頂を終え、6月の初めに日本に戻ったら、彼女のパートナーから手紙が届いていた。4月に亡くなったとの知らせだった。あの夢はお別れの夢だったのだ。

 彼女は抗がん剤の副作用ですでに髪は抜け落ちていたが元気だった。「点滴の針が抜けたら旅に出たい!」と言っていた。30歳の若さで逝った友人。父親は医者で早期に見つけられなかったことを悔やんだ。もし、自分の子供だったらと思うとかける言葉が見つからなかった。

 

 星に話を戻すと星は山より砂漠がいい。海外登山のアタック日は夜中に出発する。いろんな国で星を見たがサハラ砂漠の星が忘れられない。砂丘に横たわると、宙は星で埋め尽くされ、流星が雨のように降り注いだ。星の海に浮かんでいるようだった。

 

 他「ミラノの太陽、シチリアの星」内田洋子

  「いちばんここに似合う人ミランダ・ジュライ

 内田洋子氏はイタリア・ミラノ在住のエッセイスト。数冊読んだなかでこれが一番好きかも?というのはイタリア人らしい人が登場する小話で、笑いと寂しさと幸せが同居する。

 ミランダ・ジュライ氏の本を読むのは初めてで、鋭い感性を持ち、それを端的な文章で表現できる人なんだろうなと思う。ーーー本をチョイスする友人のセンスに脱帽です。

 

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