「たちどまって考える」&「夢見る帝国図書館」

友達文庫の2冊は面白くて一気に読み、また読み返した。

 

「たちどまって考える」ヤマザキマリ

 家族が住むイタリアと日本を往復して暮らしているヤマザキマリは数カ国に住んだ経験があり、コロナ禍の日本人の心理を客観的に考察している。

 行き当たりバッタリ、風任せに生きている私は全面的に共感し、政府の対応のまどろっこしさにイライラしていたので、スカッとした。自粛生活が長くなるとすることは皆同じで料理や手仕事、本を読み返したり、また若かりし頃に感動した名画をかたっぱしから観たりしている。

 ヤマザキマリはタイで日本語教師をしていたときにアニメの生教材を探していて知った。漫画「テルマエ・ロマエ」を覗き読みして面白そうだと思ったが、本人も相当に面白くて、ずけずけものをいうところが気に入っている。安部公房をしらみつぶしに読んだそうで、Eテレ「100分deナショナリズム」の番組で「方舟さくら丸」を紹介していた。お勧めの「死に急ぐ鯨たち」も読んでみたい。

 

「夢見る帝国図書館中島京子

 図書館が主人公の小説で帝国図書館の歴史と時代背景、そこに出入りした文人たちを縦軸とし、横軸に戦後を生きた喜和子さんと小説家を目指している私が出会う物語が織り込まれていく。

 戦後の上野公園を舞台に、喜和子さんは居酒屋で働きながら路地裏の家に芸大生の居候と暮らしている。大学教授の愛人になったり、またホームレスに惚れたりする可愛らしい人で、読み進むごとに喜和子さんの謎が解けていき、上野公園の図書館の前で迷子になっていたところに話が戻り、ようやく喜和子さんの全体像が解る。

 

 一字違いの友人がいる。友人の貴和子さんは独身で、きれいな声でコロコロ笑う。もちろん歌も上手い。お酒が飲めないのに呑んべいの同僚に最後まで付き合っていた。

 最後のページで苗字も同じとわかって驚いた。ずっーと、友人の貴和子さんを思いながら読んでいたからね。

 

f:id:fuchan1839:20201107150530j:plain