須田剋太・島岡達三美術館 新星館 in 美馬牛

    最終日は十勝連峰を望む美瑛の丘にある「新星館」を訪れた。

司馬遼太郎の挿絵画家として有名な須田剋太と陶芸家の島岡達三の作品を展示している。絵の友人たちとのアート談義の時、建物も作品も素晴らしいからと話題なっている美術館である。

 司馬遼太郎の本で須田剋太の独特な画法は知っていたが本物は迫力がある。太い線で構成された力強さとダイナミックな色彩、絵具の上から切り紙を貼り付けたコラージュは見るものに深く強い印象を与える。絵もさることながら、太い筆で迷いなく書かれた「書」が素晴らしい。胸が空くような、思いっきりの良さを感じる。

 

 島岡達三は重要無形文化財保持者で縄文象嵌という独特の技法を創り出した益子焼の作家である。器面に縄文を施文した上から釉薬をかけ焼いている。沈んだ色合いの茶や青が温かみを与えてくれる。

 仕事で縄文土器を描いているので、縄文が施文された壺に親しみを感じる。無意識に施文の順序など縄文の流れを追ってしまい、「うん、なかなか美しく施文しておる」とひとり納得。ご先祖さまの縄文人も喜んでいるかもしれない。

 

 「新星館」は大阪でお好み焼き屋を経営する大島さんが、美瑛の丘に惚れ込み、交流のあった二人の作品展示のために私財を投じ、新潟県の古民家を移築したという。夏だけ開館している私設美術館である。

 日本古来の釘を使わない建築方法と梁や天井の高さなど、日本建築技術の素晴らしさを目にすることができる。

 新潟県糸魚川から移築したそうである。糸魚川は豪雪地帯であり、屋根の勾配が急で、その分、天井が高い。海外の山ガイドが糸魚川の古民家に住んでおり、集落を案内してもらったことがある。日本の懐かしい風景が残る小さな集落である。懐かしく存在するものがなくなりつつある昨今、訪れる価値はあると思う。

 

 館長、大島さんの波乱万丈の半世紀を聞きながら、美瑛の丘を眺め作品を楽しんだ。芸術は心を豊かにする。そして、伸びやかな心を育ててくれると信じている。

 

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