本と皿

 4年前タイから帰国したら、お向かいさんが代わっていた。

最近、本好きということが分かり、本が行き来するようになった。「暗いんだけど、読む?」と勧められたのが「ワイルド・スワン」と「チャイニーズ・マザー」だった。私の本棚からは、友人の旅本や山本などがポストに入れられる。

 そのうちに「これ、食べてみない?」とお皿が届くようになった。「えっ、嬉しい〜!」食べるものは大歓迎だ。こちらからはケーキだったり、パンだったり、その時々に作りあがったものがお皿に乗せられる。

 

 タイの大学でもお隣りさんカップルと家族のように暮らしていた。朝、ドアを開けると、「morning 〜♫」とチャールズが入れたてのコーヒーを持って立っていたり、今日は授業がないからと、お昼ごはんを用意して二人を待っていたり、お祝い事も、季節の行事も一緒にしていた。お皿もカップも行ったり来たりしてて、「あら、これうちのでしょ?」と、どっちのものか分からないくらいだった。

 

 その前の高校でも、中国人のインと仲良くしていて、母国の仲間が赴任するたびに中華料理で宴会していた。中国男子は料理が上手い。調理器具などないのにサッと2、3品を作ってしまう。それにみんな英語を話すのでコミニュケーションが取りやすい。タイ語を話せない私の友人はインだけだった。友人は一人いれば充分楽しく暮らせる。

 

 そして、タイ人のもてなし上手は有名で、挨拶が「ご飯食べた?」なのだ。「まだよ」と答えるものなら「食べて行きんしゃい!」となる。教師たちは市場で買ってきたものを机の上に並べ、みんなで食べる。毎朝、同じことが繰り返される。

 

 こんな関係っていいんじゃない?と思う。タイでは一度も寂しいと思ったことはないもの。「遠い親戚より近くの他人」と言うように、近くに気のおけない友人がいるって、鬼に金棒よ。

 

 ーーーひと月も真夏日が続いていたが、ひと雨降って涼しくなった。それも、タイのように威勢のいい雨脚でスカッとした。タイ人は曇りの日に「いいお天気で…」と言うんだけど、タイ人の気持ちがよくわかるような猛暑の日々が続いている。どうぞ、皆さまご自愛ください。

 

 

f:id:fuchan1839:20210804205055j:plain