鶴
鶴が
ヒマヤラを越える
たった数日間だけの上昇気流を捉え
巻きあがり巻きあがりして
九千メートルに近い峨峨たるヒマラヤ山系を
超える
カウカウと鳴きかわしながら
どうやってリーダーを決めるのだろう
どうやって見事な隊列を組むのだろう
涼しい北で夏の繁殖を終え
育った雛もろとも
越冬地のインドへ命がけの旅
映像が捉えるまで
誰にも信じることができなかった
白皚皚のヒマヤラ山系
突き抜けるような蒼い空
遠目にもけんめいな羽ばたきが見える
なにかへの合図でもあるような
純白のハンカチ打ち振るような
清冽な羽ばたき
羽ばたいて
羽ばたいて
わたしになかにわずかに残る
澄んだものが
はげしく反応して さざなみ立つ
今も
目をつぶれば
まなかいを飛ぶ
アネハヅルの無垢ないのちの
無数のきらめき