「心的外傷と回復」ジュデス・L・ハーマン


 あらゆる心的外傷(トラウマ)問題のバイブルと言われている本である。『心的外傷と回復』は、1992年の初版刊行以来、平易ではない文章にも関わらず、世界中で読まれている。本書は、原書2022年版にもとづき、長大な「あとがき――心的外傷の弁証法は続いている(2015)」と「エピローグ(2022)」を付した増補新版である。

 

 現在も続く、ウクライナへのロシア侵攻、イスラエルパレスチナ戦争など市民を巻き添えにした争いに、心身ともに病む人が増えるばかりである。この本はアフガニスタン侵攻以後に表面化したアメリカ軍人、特に女性兵士の心的外傷、児童虐待の後遺症としての複雑性PTSDカトリック教会による組織的な性虐待などの問題を取り上げ考察しながら、この30年間の心的外傷研究を提示している。


ハーマンは最後に:
『結局のところ、心的外傷を癒すためには身体と脳と心を一つに統合することが必要なのだという、基本に立ち戻ることになる。まず安全な場をもつこと、そして思い出すこと、服喪追悼すること、そしてコミュニティにもう一度つながることである。…回復の土台石となるのは、心理療法と社会的支援である。この原理は、どんな治療技法によっても、どんな薬物によっても変わることはない』と結んでいる。

ーーー健やかに子供たちが育つ世の中であってほしいと心底願う。



 

 

爽やかに晴れ〜♬

 出かけることが多く、ダウンなどの冬物の洗濯が気になっていたので、引っ張り出して風呂場で洗う。夏は水遊びが楽しい。日曜日から晴れ続きなので、よく乾くだろう。次いでにベランダも掃除して、午前中にひと仕事終えた。

 

 午後は夏野菜カレー作り。美味しいトマトソースで夏野菜をカレーで煮込む。いい香りがして幸せ気分。これで、今年も夏バテ知らず、元気で過ごせる。

 

 昨日、脳腫瘍闘病中だった佐々涼子さんがなくなり、残念に思う。彼女の本に出会ったばかりで、歯切れの良い文章に好感を持ち、新しい作品に期待していたところだった。

   ーーーご冥福を祈る。

 

 

 

Mt’ Moiwa with guest〜♬

 料理学校の生徒がやってきて、我が家で前泊し、藻岩山登山。

元気印の彼女はエネルギーが有り余っていてうさぎのように早い。のろまな亀のタートル隊は暑い暑いと汗だくなのに、先行した分をダーッと下り、私たちとまた登ることを繰り返していた。藻岩山を2回分登ったと思う。

 

 下山後は滝の霊園の安藤忠雄制作、頭大仏を見学。おかしなモアイ像も見て、我が家で安着祝い。彼女に浴衣を着せて会食。浴衣も料理もことほか喜んでくれて、浴衣は卒業式に着るというので、一人で着る方法とたたみ方を教える。

 

 好奇心旺盛な元気印の彼女から、パワーをもらった一日でした〜♬

 

 

「イザベラ・バードと侍ボーイ」植松三十里

 明治11年、イギリスの女性紀行作家のイザベラ・バードは、日光、会津、新潟、北東北、函館、日高を訪ね「日本奥地紀行」として出版した。同行した通訳、伊東鶴吉と相互の視点から、過酷な冒険旅行の様子が描かれる。

 庶民の貧しくて悲惨な環境を恥ずかしく思う伊東に、貧しいことは恥ずかしいことではなく、人を見下すことこそ恥ずべきことであるというイザベラ。旅する目的は「それぞれに文化があり、人は対等だ」と知ることかもしれない。これは著者のメッセージであり、心から同意する。

 

 昔、「日本奥地紀行」を読んだことがある。簡易ベッドとゴム製タライを持参し、自分のスタイルを変えないのは、こだわりの強いイギリス人らしい。それにしても、北海道まで馬に乗り、悪路を旅した根性は凄い。

 

 

 

トマト〜♬

 真っ赤に熟れたトマト〜♬  この雨で割れてしまった訳ありトマトをいただいた。

トマトは夏の必需品で、美味しいトマトを見つけたら箱買いする。ミートソースにカレーにジャム。冷凍保存にして、サルサやマリネの彩りにもする。冷えたトマトジュースはビールとミックスすると、夏のカクテルになる。兎にも角にも、赤い色は元気になる。

 

 ということで、今日は朝からトマトの下処理をして、ミートソース作り。よく熟れたトマトは甘くて格が違う。一味違う美味しさだ。

 さてさて、誰の口に入るだろう? と思っていたら、フランス人の留学生からメールが入った。札幌に来たいそうだ〜♬

 

 

 

「まなざしの地獄」見田宗介

 1970年代、当時19歳の永山則夫が起こした連続射殺事件を社会的背景から考察した本である。

 永山則夫網走市で生まれ、幼くして4人兄姉と共に冬の網走に捨て置かれた。翌春に青森に住む母の元に送られるが、欠席が多くまともに義務教育を受けていない。中学卒業後、新しい居場所を求め上京するが、都市はあくまでも安く使い勝手の良い労働力としてであり、両者には溝が存在する。永山則夫は出自や貧困で差別的な扱いを受け、去ったはずの過去をみる人々のまなざしに苦しめられ、国外への脱出を図る。その過程で連続射殺事件を起こす。

 

 著書は社会的背景が人間形成にどのような影響をもたらすのか?を考察していて、興味深い。永山則夫の著作集1、2を読んだ後なので、深く考えてしまった。

 

 

 

 

 

「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子

 「エンジェルフライト霊柩送還士」の著者、佐々涼子のノンフィクション、2作目である。同じく「死」をテーマにしている。

京都の渡辺西賀茂診療所や、自身の父親が在宅看護する難病の母親を題材にした。癌終末期を迎えた本人や家族が在宅で最後を迎え、遺される人にメッセージを送る逝き方が描かれている。

 

 昨年、二人の友人を亡くした。一人は癌サバイバーだったのに、急性動脈瘤乖離でなくなり、もう一人は癌を発症した時は既にステージⅣで、まだ50代だった。彼女は治療しない選択をした。海外生活が長く、日本滞在中は家具付きアパートに住んでいたが、入院はせずにホテル暮らしを選択。友人に会い最後まで自由に、自分らしく生きたいと明るく笑った。夏に発病し、キャリーケースひとつ残して、晩秋に逝った。死ぬことついて、彼女の意志は揺るぎなかった。

 

 『7年の間、原稿に書かれなかったものも含めて、少なくない死を見てきたが、ひとつだけわかったことがある。それは、私たちは誰も「死」についてわからないということだ。ー中略ー ただひとつ確かなことは、一瞬一瞬、私たちはここに存在しているということだけだ。もし、それをいいかえるなら、一瞬一瞬、小さく死んでいるということになるのだろう』ーーーあとがきより

 

 山友や親友、癌や事故で先に逝く人が多い。一緒にキリマンジャロに登頂した二人の岳友は同じ時期に癌になり、三人でお茶した時「私たち先に逝くけど、ゆっくりおいで〜♬」と明るく笑った。ーーー先に逝く人は、強く素敵な人ばかり…。