お国事情

 札幌駅ホームで函館行きの特急を待っていたところ、同年代らしき旅行者に声をかけられた。発車時間迄30分ほどあり、目の前には帯広行きの特急が停車している。騒音が酷くて聞き取れないので、歩み寄って耳を傾けたら、

「これに乗ったら、函館行きますか?」とのこと。

「いいえ、行きません」

「ニュースで雪が降るというので、小樽でカニ食べようと思ったんだけど、函館にしました」という。ひと月、北海道を廻る予定とか。

「雪が降るのは峠で、平地は大丈夫ですよ。カニなら函館で食べられます」と教えると、目の前に停車中の騒音について文句を言う。

「この騒音は酷すぎる。頭がおかしくなります!改良しないといけません!」と憤慨している。列車がホームを離れ、自由席がガラガラ状態なのを見て、さらに

「車両を減らさないといけません!3名しか乗ってないのに!」というので、

「鉄道関係のお仕事だったのですか?」と聞くと、違うと言い、今度は天気予報について文句を言う。

「雪が降る降ると脅かして、煩いですよ! 傘だ、コートがいいのって!」自分で考えればいいだけのことだ、と手厳しい。

「……???」ーーーこの人どっから来たんだろう? それで、

「どちらからいらしたのですか?」と訊ねると、スイスのドイツ語圏からだそう。

「え〜、それは羨ましい!」と、いっぺんにテンションが上がり、スイスお国事情の話に発展した。

 

 聞くと、スイスに50年住んでいて日本の銀行に勤めていたそうだ。ウクライナ戦争による難民受け入れ問題。今や人口の三分の一が移民で、各地方都市の人口による受け入れパーセンテージが決まっているそうで、どこも財政が厳しいとのこと。そして、年金や健康保険の問題も多々あるそうだ。

「スイスは他国からの預金を受け入れているから、お金持ちのイメージが強いけど?」と反論すると、

「とんでもない!今年、スイスで2番目の銀行が潰れたんですよ」とのことだ。そういえば、アメリカで2番目の銀行も潰れましたね…。

 

 同年代の女同士、根掘り葉掘りそれぞれのお国事情を並べて、室蘭で降りるまで喋りまくりました〜♬  話足りなくて「イタリアのベローナに友人がいるから、行ったら寄るわ」と、アドレスを聞きました。