草を喰む羊たち

 昨年春、イタリアのアートスクールで見た草を喰む羊たち。思わず笑ってしまった。

羊は顔を上げることなく歩きながらもひたすら草を喰む。よそ見をしないし、空を見上げたりもしない。日本はもちろん、スイスでも、タスマニアでも、白い背中の集団がモコモコと下を向いて動いていく。どこの国の羊も同じなのだ、当たり前だけど。

 

 小さなスマホを見ながら動き回っている人間って、もしかしなくても羊の集団か?五感を使うことなく小さな画面で納得して生きているなんて、なんだかおかしい。乗り物の中でも、道を歩きながらでも、公園で子供を遊ばせながらでもスマホを見ている。

 

 夕方、チャイムが鳴ってドアを開けると若者が立っていた。「この近くで携帯を落としたんです」と慌てていた。今時は携帯で全てのことが出来るから、無くしたら大変なことになる。「それは大変!鳴らしてみた? 警察に届けた?」と同情してしまう。

 

 見つかるといいけど。外国だったら100パーセント見つからないし、届かない。タイの大学で日本語教師をしていた時、「もし、財布を拾ったらどうしますか」という質問に、みんながみんな「ラッキー!」と答えたのには驚いた。「日本では財布は警察に届きます」と言ったら、生徒の方が驚いていた。

 ーーーやあ、届くといいけどね。届くことを願ってるよ。

 

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