「なりすまし」スザンナ・キャハラン

 1969年、スタンフォード大学のローゼンハン教授を中心としたグループが精神病者を装い閉鎖病棟に入院した。専門家であっても「狂気」と「正気」の見分けが困難なことや病院の内状を暴き出し、その実証結果を「狂気の中で正気でいること」として、論文を発表した。

 一方、著者はかつて自己免疫性脳炎を発症し、その症状が統合失調症と同じことから、精神病棟に入れられそうになる。寸前で正しい診断が下され治療できたが精神病の診断の曖昧さに愕然とし、ローゼンハンの論文に興味を持ち、調査・取材に着手する。

 

 各地を飛び回りインタビューするが、故人も多く、生ていても記憶は薄れていて、取材は困難な状況となる。しかし、彼女は元新聞記者であり、その記者魂がしつこく食らいつき、論文の事実を暴いていく。ノンフィクションではなく、推理小説を読んでいるようだ。

 「カッコーの巣の上で」の映画で、問題を起こす主人公が、最後にロボトミー化されるシーンが重なる。扱い安くするために「正気」の人間が「狂気」にされるのだ。

 

 昨年、友人がコロナの後遺症で精神を病み、「私、おかしいのよ…」というので会いに行った。「自分で、『おかしい』って言ってるうちは大丈夫!」と言ったけど、ちょっとおかしかった。息子さんが精神病棟に入院させて、無事に回復した。

 明日は我が身、どうなるかはわからん。日、一日と、楽しいことだけを積み重ね、笑って暮そう〜♬