「北海道の縄文文化 こころと暮らし」亜璃西社

    元職場、北海道埋蔵文化財センターの調査員による北海道全般の縄文文化を紹介した本である。ページをめくると、懐かしい名前が連なり関わった遺跡が思い出される。私は20年以上に亘り、掲載されている遺物の作図をしていた。

 

 土器や石器もまた懐かしく蘇る。この仕事のいいところは触れることができること。博物館や展示室では遺物に触れることはできない。土器や石器に触れて撫で回し、土器であれば厚さを測り、紋様のパターンを確認しながら図に情報を入れていくのだ。石器の場合は打ち欠きの新旧の情報を入れる。

 

 エベレストの巨大な山魂を描いていた時、黒曜石のコアのようだと思った。山は地表が隆起し、さらに厳しい自然の営みが山魂を打ち欠き形成されたのだ。ならば打ち欠きの新旧があるはず、それは風の方向にスプーンのように剔れるだろうと思った。黒い山魂を描きながら、仕事の手順を思い出していた。

 

 ほとんどが写真による紹介であり、目で見て理解できるようになっている。言葉もわかりやすい。手にとって見てほしい。私たちの先祖の暮らしがそこにある。

 

 

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