民族衣装

 旅に出ると買い求めるのが布。その土地の手織りの布をつい買ってしまう。道端で売っているものだったり、路地裏の店に掛けられている色褪せた布だったりする。アジア圏で安い値段で売られているのをみると、勝手に手が伸びてしまう。染織りをしていたので、一枚の布を織るのにどれだけの時間がかかるのか分かって、可哀想になり力が抜ける。

 

 和ダンスの中を整理したら、ネパールで買った麻のサリーが出てきた。トレッキングの時にタメルで買ったものだ。欧米人で賑わっているパン屋さんがあり、そこで朝ごはんを食べていた。

 ある朝、混んでいたので向かいの民族衣装の店を覗いた。サリーが積んであり、結構高い。いろいろ引っ張り出して体に当てていたら、店員が寄ってきた。「安くしてあげる」という。それでもやっぱり高いので「また来るわ…」とパン屋さんに行こうとしたら、「今、ボスがいないので半額にする」という。ーーーえっ?と思ったけど、買いました。

 

 そんな経緯を思い出して、広げてみた。よくみると手刺繍なのである。これだけの布地に刺繍する時間って、と思うと気が遠くなる。サリーは着ることがないので、せめて目に触れて楽しもうとレースカーテンにリメイクすることにした。しかし、生地が薄くミシンがかからない。腰の部分の当て布も手縫いにしてある。

 よし、インド人に見習って、私も手縫いにしよう!と挑戦。アイロンをかけたら、ネパールの埃っぽい匂いが立ち昇り、懐かしい。一日中、針を持ってチクチクとカーテンを仕上げました。