詩集「死者に接吻」佐藤武

 詩集「カロートのなか」についでのニ作目である。

本を手にすると、何よりも優先して読んでしまう私だが、開けなかった。言葉が哲学的で重く暗いのを知っているので、闇に引きずり込まれそうで怖かったのだ。

 

 開くと、ドキッとするくらいセクシーだった。死者と交わす甘い回想。残されたものの悲しみと切なさが伝わってくる。浮遊する魂との会話、自然が織りなす造形への驚き、老いてなお瑞々しい感性を持ち続ける。そうありたいと願う。