「地図と拳」小川哲

 物語は1899年の日露戦争に始まり、1955年までの満州を舞台にしている。中国東北部を訪れた軍部の密偵と通訳の細川、都市計画にかかわることになる日本人技師、ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父、出自も思想も異なる人々が地方都市、ハルピンに引き寄せられていく壮大な物語である。

 日本が侵略し、国土を広げようとした殺戮の歴史はどうだったのだろう、という興味から読み進めたがドキュメンタリーではないので後味が悪く、消化不良だった。

 

 今も続くウクライナ戦争や、ガザ地区イスラエルの戦闘。地図は国境の境界線であり、拳は暴力である。犠牲になるのは市民や子供達で、毎日報道される現状に居た堪れなくなる。人々が国を追われ、難民になることのないようと祈る。

 

 

     

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