「母を失うこと」サイディア・ハートマン

 歴史的に有名な大西洋の三角貿易航路。17〜18世紀にかけて、アメリカ大陸・西インド諸島プランテーションの労働力不足のため、西アフリカで行われた人狩り奴隷貿易。劣悪な船底に人間を詰め込み、人間の荷を降ろすと、砂糖や綿花、タバコなどをヨーロッパに運んだ。

 アフリカ系アメリカ人の作者は自分のルーツを辿り、かつて奴隷狩りが行われていた、西アフリカのガーナに赴く。どのように人が狩られていたのか、どのような暮らしだったのかを取材する。アメリカでさえ、先祖が奴隷だったことを触れない人が多く、現地では尚更のこと、人々は話したがらない。

 

 北海学園大学在学中に、ハイチについて学んだことがある。大西洋に浮かぶ小さな島は奴隷貿易航路の基地になっていた。義務教育で学んだ数行の史実を、より詳しく学べると期待して履修したが、退職間際の教授はハイチを訪れたことがなかった。研究って、机上の推論?でいいわけ?なんでも確かめたい私は、ハイチやキューバへ行ってみたいと思った。

 

 未だに続く「奴隷制の余生」は、公民権運動のあとの「ブラックライフズマター」のように、奴隷制の解けないしこりと共に、人々の間に重く残る。