「アラビアのロレンス」1963 完全版 デビッド・リーン監督

 若かりし頃、この映画を見て砂漠に憧れた。

アラブの衣装を身につけた青い目のピーター・オトゥールにときめいたのだ。あのときめきを、もう一度....と完全版を購入した。

 

 ロレンスの人物像にハマった。BBCのドキュメンタリー番組によると、1888年アイルランドの男爵の私生児として生まれ、オックスフォード大学を卒業。地学と本好きの青年だった。シリアでの発掘調査に従事し、現地の作業員をまとめていたことでアラブ語を覚え、また他の言語にも堪能だった。その後、第一次大戦中に入隊し、サイクス・ピコ協定に尽力した。オスマン帝国を英仏露で解体した史実に基づき、この映画が製作されている。

 

 ロレンスは謎の多い人物であり、描くとしても一筋縄ではいかない。それを無名のピーター・オトールが演じていて、ぴったり、ハマり役のように思える。

 再観して、分かったことだが、ロレンスはゲイだったのだ。ピーター・オトール演じるロレンスの英語の話し方がオネエ言葉で、歩き方も独特だ。タイに住んでいたことがあり、同僚や生徒にレディ・ボーイが多かったからすぐに分かった。のちにピーター・オトール自身もカミングアウトしている。

 首長アリの役はアラブ人のオマー・シャリフ。のちに「ドクトル・ジバゴ」で有名になる。ファイサル王子はアレック・ギネス。アウダ・アブ・タイはアンソニー・クイン。アンビー将軍はジャック・ホーキンス。もう、これ以上のキャステングはありえないと思えるくらいぴったりで、人物と壮大な画面に引き寄せられる。

 

 最初のロケ地はアカバから東へ400キロ、サウジアラビアの国境に近い場所で水もない灼熱の砂漠。スペインのセビリアに攻略都市、アカバを再建し、モロッコオスマン帝国の虐殺シーンを撮影した。

 

 砂嵐の中のハードな撮影もさることながら、ラクダ乗っての戦闘シーンが大変だろうと危惧していたら、戦闘シーンでピーターが落ちたという。ラクダはピーターの体を庇い立ち尽くしたそう。オマー・シャリフが「ラクダは不思議な動物だ」と言っていた。

 

 きりがないので続きはまた。ロレンスについて論文をかけそうなくらいだ。

映画は見るたびに面白い発見がある。この映画の完全版はスピルバーグが関わっていて、今も映画を作るときはこの映画を見直すそうだ。

 

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