人生100年の時代を迎え、長い老後をどう生きるか?どのように生きがいを見つけるか?というような自己啓発本ではないどころか、『老人は早く死んだ方がいい』というのがメインメッセージである。ややマイルドに言って『長生きに価値があるという認識は外しなさい』ということ。
自己啓発本は「自分らしさ」という謳い文句で人を資本主義社会に組み込んでいるに過ぎなく、いくら輝かしい人を知っても、それは自分ではなく他人の人生なのである、とすっぱりと切り落として、気分がいい。
死ぬとはどういうことか?
『それは生きている間に手に入れたものの一切を手放すことです。(中略)人生で背負ってきたあらゆる荷物を全て下ろすことです』ーーー田中真知
田中真知はおもしろそー!と思い、図書館でいろいろ借りた。もとは旅人らしい。「アフリカ旅物語(中南部編)」のザイール川下りが面白かった。本人もこんな旅はもうできないだろうと言っている。
返却しに行って「アグルーカの行方」角幡唯介を借りてきた。129人全員死亡したフランクリン隊が見た北極を友人と旅するノンフィックション。以前、テレビのドキュメンタリー番組で見て、精神があやうい?と危惧したが、本はフランクリン隊の行動と並行して書かれていて興味深かった。
極地探検の本に惹かれた時期がある。「世界最悪の旅」英国のロバート・スコット隊や「南へ」のアーネスト・シャクルトン、「南極点」のアムンセンなどなど。人間、窮地に追い込まれたらどうなるんだろう?と思った。
これらの本は山で役立った。本の中に、仲間の鼻水を啜る音にイラついたという下りがあり、えっ、そんなこと気になるの?と半信半疑だったが、海外山行でスープをズズーと啜る音にテントを切り裂きたくなったことがある。誰しも平常とは違う精神状態に陥るのだ。
本は読み出したら芋づる式に読みたい本が出てくるから、困る。春らしい陽気になって山歩きをしたいと落ち着かない。一日も早く仕事を終えたい。