映画「ノマドランド」

 2020ベネチア国際映画祭、金獅賞&トロント国際映画祭、観客賞をW受賞した映画。現代のアメリカ西部を舞台に車上生活者を扱ったドキュメンタリー風のロードムービーである。

 主人公のファーンは企業の破綻で夫と暮らした土地を離れ、思い出の品と共に車上生活をしながらの季節労務者となる。冬場はAmazonの仕分け倉庫で働き、夏から秋は自然公園のキャンプ場や農場で収穫作業し、旅をしながら暮らす。

 

 1970年ヒッピー世代の老人たちは集い、助け合い、コミニティのような空間ができあがる。全体的に暗いのは、旅をしているのは若者ではなく、年金だけでは暮らせない老人の季節労働者だからだ。(アメリカで年金だけで暮らせる人は17%にすぎないそうだ)若かったら、おもしろそーじゃん!と思えるけれど、老人には辛い生活だと思う。

 自由とは何か? 私たちに老後はない(働き続けるしかない)。自然と人との新しい出会いを求めて、人それぞれの問題を抱え旅を続ける。主人公のファーンはそれを選択する。

 

 数年前に北アメリカ大陸横断旅をしたことがある。カナダの友人とワンボックスカーを改造した車で、太平洋のバンクーバーから大西洋に面するボストンを経て北上し、プリンスエドワード島近くまでキャンプしながら移動した。

 アメリカは100マイルごとくらいに公共のトイレが設置されているが、その駐車場で寝ることはできない。夜中に着いて寝たことがあり、朝、トイレの洗面所で髪を洗い、手を乾燥させる吹き出し口に頭をかざしたら、「髪乾かし禁止!」と張り紙がしてあった。車上生活は自由なようで、いろいろと制約がある。

 

 それは、大陸の広大さを実感した旅だった。その豊かさに魂げ、とんでもない国と戦争をしたものだと思った。

 

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