ピアノのおばあちゃんは95歳で私の憧れの人。何が羨ましく素敵かって、ピアノを演奏できること。音楽は人と時間を共有できる楽しさがある。ご主人が亡くなってから始めたというピアノの発表会に初めて招待された。今年は札響でコントラバスを弾いていた息子さんとのデュットとのことで楽しみにしていた。
友人によると、ピアノのおばあちゃんは初めての発表会で、帰るなり布団を被って寝てしまったそうな。「どうしたのか?」と訊くとステージで上がってしまい一音も出せなかったそうだ。ーーー相当なショックだったんだね。
それがどうして、今ではショパンを弾けるようになったのだ。私は感激しているんだけれど、身内は「ガチャガチャしたところは間違ってもいいけど、メロディラインを間違えちゃいかん」とか「みんなが知ってるような曲にすればいいのに…」と手厳しい。
プロの息子さんとのデュエットは「エレジー第1番 ニ長調」G・ボッテジーニ。コントラバスとテンポが合わなくて、息子さんがストップをかけた。テンポを指示し、横に立っているアシスタントがおばあちゃんのテンポがずれないように誘導する。終わりまで順調に弾きこなせてほっとした。おばあちゃんの頬はピンクに染まり、感動的なデュエットだった。
小学生から大学生、社会人の男女、年齢問わずの発表会は音楽に対する情熱が溢れていて素敵だった。何度も弾き直していた40代の男性、ノクターンを弾いた若い妊婦さんの音楽的感性は素晴らしく、ひとつひとつの音を大切にする弾き方だった。ーーーお腹の赤ちゃんも感動しているかもね。
音楽は上手い下手だけじゃなくて、どれだけ音に愛情を込めているかだよね。絵も同じこと。どれだけ心を込めて色と形を表現しているかだと思う。