安酸学長の最終講義を聴きに行く。
題目は「新しい人文学についての去り行く者の提言」。表裏3枚のレジメが用意され、講義を聞きながら目を通していくとわかりやすい。人文学と人文科学の違いについて述べ、人文学部長時代に「人文学概論」を2ヶ月半で書いたそうだ。今更ながら頭のいい先生だと思う。
結論として、人文学とは「人間とその文化を総合的に研究する学問」と規定し、現代社会において新しい人文学とは、自然科学者や社会学者に対して、人文学の原理をしっかりと弁証する必要があると述べた。更に、グローバル化した現代では、経験的諸科学を取り入れて、人文学の基盤となりうる新たな人間性の理念を確立しなければならないとしている。
最後に、中島みゆきの「空船」の歌が流れた。
その船は自らを空船と忘れているのか
その船は舞い上がるその時を忘れているのか
地平の果て水平の果て
そこが船の着陸地点
その船を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ
在学中、講義の間に「学問は暇じゃないとできない」とぼそっと呟いたのが耳に残り、忘れられない。受講していたのは「欧米思想史」で、専門は「キリスト教学」である。