「アウシュビッツのお針子」ルーシー・アドリントン

 アウシュビッツを生き延びたお針子たちを取材したノンフィクションである。ヴァイオリンなど、楽器が弾けることでガス室送りを免れた人々がいた中で、お針子たちはナチス幹部家族らの洋服を仕立てることで、ガス室を免れたのだ。

 「高級服仕立て作業場」と呼ばれたその施設で、絶滅されられる寸前のユダヤ人お針子たちは、硬い友情でナチスに対し抵抗した。縫うことは焼却炉から逃れる手段だったのだ。

 

 「衣服は人間を表明するものなのだ」という切実な言葉にたじろいだ。列車で到着したユダヤ人は生と死に選別され、ガス室に送られる前に裸にされ、頭を丸坊主にされる。個人としての特徴が全てなくなるのだ。ヘアスタイルがいかに個人を表すものであるか、ということにも絶句した。

 

    今週は絵に取り組もう、と思っていたのに、本が気になり図書館に受け取りに行く。手にしたら最後、読み終わるまで本を置けない。寝るまでに読んでしまった。

 北ドイツに転勤した友人家族がいるので、訪れた際には、ポーランドの施設に足を運びたいと思っている。重く胸に堪えた本である。