芸術の秋

 早春に始まったコロナ感染は波のようにウェーヴを繰り返し、収束しないままに秋になってしまった。自粛生活で家に篭って絵を描く毎日だが、久々にギャラリーや美術館へ足を運んだ。

 

 ギャラリー門馬で高橋靖子さんのチクチクアートや會田千夏さんの透明感のある絵に感嘆し、近代美術館で開催されている神田日勝展で懐かしい風景と出会った。お気に入りの三岸好太郎美術館では三岸節子のエネルギーに敬服し、新しくできたコーナーで若いアーチストの斬新さに刺激を受けた。

 さらに、芸術の森美術館で始まったムーミン展にも足を伸ばして、トーベ・ヤンソンの原画をさらっと見て回り、郊外のひんやりした空気の中で秋を堪能した。

 

 あっというまに一年が過ぎようとしている。コロナに振り回されているこの期間は絵を描くのにはいいと思っていても、心まで引篭りになりそうで息苦しくなる。それに人と会わないと臆病にもなり、回りがぴりぴりしているから人嫌いになりそうだ。

 

 ここ30年くらいは、年に2、3度海外に出ていたので無償に飛行機に乗りたくなって空を飛ぶ鳥がうらめしい。絵も自分とにらめっこを繰り返しているようで進まず、絵の具を消費するだけ.....。

 キッチンの窓から、手稲山に沈む夕日を眺めながらワイングラスを傾け、ああ今日も日が暮れたと思う。

 

 高校生の時、山で友人を亡くした数学の教師が「明日、美味しいものを食べるため生きてる」と言った。黒板の数式と話しているような先生だったが、その言葉だけが心に残っている。最近、人生そんなもんでいいかもね、と思う。

 

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