故郷の港の絵がほぼ完成した。
幼馴染の旦那は元漁師なのでごまかしは効かないだろう、と心配した。潮風を浴び、海の色や光を毎日みてたんだから…。
水を描くのは初めてなので巨匠はどう描いているんだろうと画集を買ってきた。当然のことだが当てはまらない。空気感が違うし、外国の海って磯臭くないんだよね。日本海は湿った潮の匂いがする。
子育て中、妹弟の子供をみんな引き連れて港へ遊びに行ったことがある。マグロ船の漁師が昼ご飯を食べていた。「幼稚園の先生かい?」と聞かれて、船内を案内してくれた。
船は魚のとオイルが混じった生臭い匂いがした。船底を開けるとイカと鯖がぐるぐる回っていて「イカは鳴くんだよ!」という。「本当?」と子供たちが目を輝かせると、タモでイカをすくった。イカは水から出る瞬間にキューンと鳴いた。そのイカをビニール袋に入れてお土産だと持たせてくれた。
家に帰ると母が「どこでイカ釣ったんだば?」と驚いていた。マグロの餌はお昼のイカソーメンになった。
ーーーこの絵は居間のソファの上に掛けられる。懐かしい思い出の風景だ。