友達文庫

 本好きの友人から届いた林芙美子の「下駄で歩いた巴里」と「洋子さんの本棚」。林芙美子の紀行文は角田光代の「物語の海を泳いで」で紹介していて気になっていた。

 昭和5年、「放浪記」がベストセラーになり、翌年中国大陸を横断し、ハルピンからシベリア鉄道に乗り、ロンドンを経てパリに入る。おりしも満州事変の最中で、軍国主義にまっしぐら。鞄一つで2等寝台に乗り、帰りの旅費も持たずに一人ヨーロッパへ旅立つのである。そして、一年あまりをロンドンとパリで暮らす。

 

 まあ、彼女ならやりそうなことだ。なんたって生い立ちが旅そのものだったのだ。父親が駆け落ちした後、母と子は行商を生業とし、養父はテキ屋だった。その日暮らしの貧しい暮らしで、食べるのもやっとだった。ある漁村で、屋台のタコが食べたいと言って駄々を捏ねる彼女に、母親は「今、食べたばかりなのに、なんて食い物に執着するん…」と嘆く。したいことをし、めげることのない彼女の生き方は自由そのものだ。「放浪記」を読んで以来、我が道を行く奔放な逞しさに感銘している。

 

 その後も、樺太や北海道を一人旅行している。北海道で一番に気に入ったのが江差追分で、声の広がりが外国の舟唄かと思ったそうだ。スペイン人の友人夫婦も同じことを言っていた。北海道一周して、「どこが良かったか?」と尋ねると「江差」と答えたので「なんで?何もないでしょ?」と言ったら、江差追分が素晴らしいと感激していた。「私の田舎よ!」と、誇りに思い、嬉しかったわね。

 

 というわけで、本を優先して、絵を描かない2日間でした。