母の手仕事

 アメリカに移住した友人から、母が作った貝殻雛の写真が送られてきた。

20年ほど前に引っ越す時にあげたらしい。よくまあ、持っていたものだと驚き、感心するやら、懐かしいやら…。

 

 母は存命中、着物の仕立てをしていた人で、家にハギレが沢山あった。子供の頃、そのハギレで着せ替え人形の服を作ったり、母に裁ってもらい着物を縫ったりしていた。絹の手触りが好きだった。生地の触感で絹の良し悪しや、布の素材を知ることができる。これは結婚後、羊の牧場で手紡ぎを習った時、「原毛の良し悪しがわかる」と驚かれた。

 

 晩年、母が千葉の妹宅に身を寄せてからも、着物の仕立てをしていたようで、ハギレを集めて、袋物や、貝や木の実の雛人形を作り、手仕事を楽しんでいた。

 その頃、私は海外バッグパッカー旅に出ていて、誰も欲しがらない母の雛人形や袋物をお土産にしていた。どこの誰にあげたのか定かではない。お世話になった人あげていたように思う。今、家に残されているのは一組だけ。春、三月。ひな祭りに玄関に並べられる。

 

 雛人形はきれいな空き箱に入れて送られてくるので、「えっ、なに?美味しそう〜!」と胸が早る。が、開けてがっかり、雛人形は食べられません…。

  ーーー懐かしく、母のことを思い出しました。