映画「ニュー・シネマ・パラダイス」

 イタリア語を始めたので久々に「ニュー・シネマ・パラダイス」を見た。

1991年に日本でヒットした作品でシチリアの小さな村で映画技師を務めるアルフレードと彼を慕う少年、サルヴァトーレ(トト)の物語。戦後の何もない時代、娯楽は映画を見ることだった。トトは映画の中で成長し、転校してきた美しい娘に恋をする。アルフレードの策略で二人は別の道を歩むことになってしまうのだが、30年後、アルフレードの葬儀に戻り、自分が失ったものとアルフレードの愛に気づく。彼はトトを映画技師で終わらせたくなかったのだ。

 

 生まれ育った道南の小さな村にも映画館があった。舞台は村の演芸会に使われていて大きな木製のベンチが並んでいた。私も映画と共に成長し、小学生の時は松島トモ子小鳩くるみの母恋物語に涙し、美空ひばりの時代劇の立ち回りに憧れていた。中学生になって、ベンハーや十戒、西部劇、親鸞まで見た記憶がある。親鸞のときは祖母と見に行った。ばっちゃんは数珠を持ってきていて、入水するシーンで「なんまいだなんまいだ...」と拝んでいた。母とは「君の名は」を見ていた。テレビのない時代、映画は唯一の娯楽だったのだ。

 

 地元を離れ、高校に入学してから映画をおごってくれる男友達がいた。まさに青春時代、邦画の全盛期で小林旭の渡り鳥シリーズや吉永小百合をよく見ていた。卒業後は横浜に就職したので名画座少女と相成り、休みは映画館のシートに身を沈めていた。

 

 大学に入学してから一度も映画を見ていない。キノではどんな映画がかかっているのだろうか。小さな映画館の座席に身を沈める時、いつも村の映画館を思い出す。

 

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