空を飛んだ日

 数年ぶりに大雪に足を運び、大雪山系の山並みを眺め、背中に羽が生えた気分。

ウラシマツツジや高根ナナカマドの紅葉、箒のようなチングルマの白い群落にハイマツの緑、銀色に光るスゲ類や地衣植物、山は錦絵のように華やいだ世界を繰り広げている。

 

 登山道には数日前の新雪が残り、羆や狐の糞の置き土産。彼らは冬に備えてお腹を満たすのに忙しそうだ。冬眠前の素晴らしいワンダー・ランドに感激し、友人との会話は「すごいね!すごくない?」のワン・ワードのみ。ーーーもう、家に帰りたくない!

 

 そういえば、大雪山系に登るたびに同じことを言ってた。「誰か食料を運んでくれないかなぁ、1週間くらい此処にいれたら幸せだろうな....」と。

 ま、そんなことは叶うわけもなくて、山岳会に在籍すると憧れは日高になった。ほぼ日高の稜線に足跡を残し、そして夢は世界の山や8000mの頂きへと移っていった。

 しかし、今、また大雪山系に足を踏み入れたことで、大雪連峰や十勝連峰を縦走した友人と共有した時間を思い出し、感無量だった。

 私の山人生は大雪連峰に始まり、大雪で終わろうとしている。広い大地と優しい稜線に癒され、今年最高の一日となった。

 

 下山後は市根井孝悦写真館へ。

10年ぶりくらいに市根井さんに再会し、山への変わらぬ情熱に驚いた。出逢いは30年以上前の秋の黒岳の石室で、彼は冬の撮影の荷揚げで、私は旭岳への縦走だった。

 日高の稜線や写真展で会うと「山ばかり登ってないで結婚しないと...」と見当違いのことを言われていた。旅友には「山と結婚したね!」と言われ憤慨していたが、山に取り憑かれていたことは確かだ。

 ひとつのことを成し遂げることへの半端ない情熱に「素晴らしい人生ですね!」とまた会えることを約束して別れた。

 

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