個展4日目 晴れ

 スカッと晴れ渡り、日差しも春めいて舗道がほんのりと温かい。

お天気がいいので出足が良く、朝から夕方まで人が途切れる事がなかった。ここの職員らしき人たちまでギャラリーを覗いてくれている。

 

 メディアのお陰で同郷の方や、高校の同窓生、在籍していた山岳会のメンバー、元職場の同僚にも再会し懐かしかった。生前告別式のようだというと縁起でもないと笑われたが、繋がりのあったみんなに会えるのは嬉しい。友人は少しづつ重なり合って繋がっている。みんな長い間ご無沙汰している方ばかりだけれど、顔を合わせた瞬間にその時に共有した時間が蘇る。特に山仲間がそうで、山の風景まで思い出す。

 

 今日のギャラリーのトップニュースは後期高齢者と思われる女性にマッキンリーに登りたいとアドバイスを求められたこと。目も耳も点になった。どう見ても体力があるようには見えない。腰も曲がり、くの字姿勢だ。

 「冬山を経験していることと、荷上げがあるのでリック20キロとソリ30キロを引く体力が必要で、キャンプは6ヶ所、最低3週間かかります。アイゼンとピッケルが必要な山です」と答えると、「買えばいいんでしょう?」ときた。ということはアイゼンを履いたことがないということだ。これから装備を買って、どうしてもマッキンリーに登りたいらしい。「それならば山岳会に入って訓練した方がいいです」と言う。また、どれくらいかと聞くので困った。もう疲れて「2シーズンの冬山訓練は必要でしょうね」と答えた。

 

 諦めるかと思ったら、「モンブランはどうでしょう?」とまた聞く。「午後天候が悪くなるので早く歩けることが必須です」言う。「歩けない場合はどうしますか?」と聞くので「登山中止でガイドに降ろされます」と答えると、今度はマッターホルンに登りたいと言う。「その山はクライミングの山で、私は登ったことがありません」と答えているうちに段々と腹が立ってきた。

 

 丁度、山ガイドの友人が訪れて話が途切れてほっとする。やり取りを聞いてたらしく「死にます!と言えばいいのよ」と笑っている。もう、いろんな人がいて対応が大変だ。ーーー人生いろいろ、人それぞれでいいけれど、山には順番があります。

 

 

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