映画「人生クライマー」

 山野井泰史ドキュメンタリー映画を観た。

山岳会に在籍していた時、毎年登山研究会があり、有名な登山家を招き講演会が行われていた。その際に、山野井泰史さんと妙子さんにお会いしたことがあり、感銘を受けた。

 本や雑誌で存じ上げていたが、お会いして、子供がそのまま大きくなったような方だと思った。山に対する真摯な情熱と正直さ、垂直な壁に挑んで行く勇気はどこから生まれるのだろう。夫婦で挑んだギャジュンカンで手足の指を失い、既に指を失っていた妙子さんの指は全てなくなった。それでも、ビレーは出来るし、運転も包丁も握れると笑顔を見せる。山野井さんに至っては障害者手帳を見せて「交通費半額になりました!」と笑う。

 その後も登山を続け、2019年、登山家の最高賞と言われる「ピオレドール生涯功労賞」を受賞した。日本人として誇らしく思う。

 

 山野井泰史さんご夫婦が住む奥多摩を訪れたことがある。古い民家にはクライミングの壁と登山用具しかなかった。今は桃源郷のような伊豆に暮らしている。畑を耕し、梅や蜜柑の木の手入れをし、機能的なキッチンで料理を楽しんでいる。

 

 そして、未だにクライミングに情熱を傾けている。正に「人生クライマー」なのだ。