大学で絵を木枠から剥がして持ち帰り、居間の壁に貼り付け手直しをしている。
娘に写真を送ったら、「もう、ものは増やさないように!」という返事がきた。
ーーーそうだね、片付けなければならないのは子供たちなのだ。
機織り機も居間に鎮座していて畳2枚分のスペースを占領している。息子に「もう、しないんだったら処分しなさい!」と言われ続けているが「いや、いや老後にするから」と反論すると「いったい、いつから老後なわけ?」と呆れられている。
テキスタイルは布だから敷いたり纏ったりして暮らしに役立つが、絵は着るわけにもいかず、特に大きなキャンバスはただでさえ重い上に絵の具が載っているから持ち上げるのもままならない。場所塞ぎになるだけだ。大変なことを始めちゃったな、と思っている。
ところが、朝起きて居間のブラインドを開けたら、山が陽に輝いている。夜空の深い闇に塗り込めた色が浮き出しているのだ。えっ、すごいじゃん?と絵を見直した。
で、思うに。絵は身に纏うことはできないが、心に纏うことができるのだ。心を豊かににすることは豊かな暮らしを営むことに繋がる。
娘の成人のお祝いに絵を贈ったことや息子の結婚祝いにも絵を贈ったこと、記念日に絵を買ったのは正解だった。
森茉莉の贅沢貧乏を地でゆく友人が元気になるから、と小さなオブジェを買った。素敵な人だと思う。