「ワイルド・スワン」ユン・チアン

 数日、毛沢東政権下、壮絶な激動の時代を生きた三世代にわたる家族のノンフィクションに沈没していた。

 著者のユン・チアンは1952年生まれである。祖父母と父母の時代、そして自分を通してその時代に生きた家族が語られる。その間に日本による侵略があり、その戦争で3500万もの中国人が犠牲になった。最も近い過去の歴史であり、身につまされて読んだ。

 1949年、毛沢東による中華人民共和国の設立。中国共産党とはどのようなものなのか、1960年4000千万もの国民が死んだ飢餓とは?犠牲者の半数は10歳以下の子供だと言われている。日本は高度成長期に突進していたではないか、何故日本に、世界に救済を求めなかったのか?国民は大躍進運動政策に翻弄され、近隣、友人による誹謗、中傷、当局による下放、強制労働、迫害と拷問、階級敵人として友人や家族はズタズタに切り裂かれる。

 

 タイで日本語教師をしていた時、中国人の同僚と親しくしていて、彼らの愛国心はどこから来るのだろうと漠然と思っていたが、現実が見えたように思う。
   中国共産党の政策を暴いたこの本は中国人に読まれたのだろうか?当然なことながら、自国で出版されることはなく、1978年、著者がイギリスに留学、その10年後に母がイギリスを訪問したときに聞き出した話を書こうと思ったと言うから、海外で出版されたのだ。深く心に刻まれる本である。

 

f:id:fuchan1839:20210606202240j:plain