「謎の納豆アジア」高野秀行

 帰国して、一番に食べるものは、「卵かけ納豆ごはん」である。どんなに夜遅くに着いても、自宅前のコンビニで卵と納豆を買って帰宅する。人生最後に食べたいのも、「卵かけ納豆ごはん」である。納豆と豆腐は我が家の常備食だ。サラダに入れたり、海苔巻きにしたりと、食欲がなくても口にすることができる便利なアイテムだ。子供時代から食べていた納豆は経木に包んだマルカワ製品で、なくなって久しい。

 

 納豆と豆腐は日本が発祥の地だと思っていたら、違っていた。赴任していたタイや、ビザ更新に度々訪れたラオス、そしてミャンマー、ネパールなど、広範囲のアジア圏でも食べられていたのだ。それらの国では乾燥させ、調味料として使われているのだそう。

 タイで納豆を食べる文化があるのは北部地方である。私が住んでいたのは、タイの東北部、ラオス国境に近いカウオンと、カンボジア国境に近いシーサケットである。シーサケットでは自家製豆腐は売っていたが、納豆は見かけなかった。

 

 昨晩、タイがらみの友人宅に夕ご飯に招ばれたので、「タイの納豆を食べたことがあるか」と訊いてみた。すると、調味料として使うのを知っていた。残念、惜しいことをした。一年に一度はチェンマイに行っていたし、北部を旅行したことがあるので、食べるチャンスがありましたね。

 

 ネパールは20回くらい行っているのに、全く知らなかった。ダルバート(豆カレー)とアチャル(漬物)が好きだった。それに、ヤクの干し肉とチーズは絶品である。ストローで飲むトンバ(キビの実を醗酵させた自家製酒)も飲みたくなった。

 

 読んでいるうちに、ネパールが恋しくなった。また、あの素晴らしい峰々を眺められたら、どんなにか幸せだろう〜♬

    ーーー次は糀文化の本も読んでみようと思う。