山岳雑誌「山と旅」

 終活を始めた友人から、1969年代の雑誌を頂いた。

「山と旅」という月刊誌である。その中に「小さな頂き」という一原有徳さんの寄稿があり面白く読んだ。のちにハードカバーとして出版されたように思う。

 

 一原有徳さんはアーチストでもあり、山の好きな同僚から教えられ、存在を知った。個展の際に一度だけお会いしたことがある。その時すでに高齢だったと思うが、生き生きとして、青年のような目をしていた。作品を創り出す人はエネルギーがあると思った。

 改めて読んでみると、文章にも才能がある。北海道の「小さな頂き」がひとつの物語になっていて、山の静けさや匂いまでも伝わってくる。彼の本を読んだ頃は、まだ山に登ったことがなく、ただ憧れていただけだった。

 

 この雑誌が出た20歳の頃、加藤文太郎の「単独行」や井上靖の「氷壁」に心を躍らせ、山男に憧れていた。まさか自分が山に登るようになるとは思ってもいなかった。山岳会に籍を置いてから、日本の山岳会の歴史や山本を貪り読んだ。半世紀前は未踏峰も多く、植村直己や長谷川恒男はパイオニア的存在であったのだ。

 

 雑誌の中に懐かしい名前を見つけ感慨深い。私が最初に在籍した「札幌山の会」の名前もあり懐かしかった。会員募集に「25歳までの方」とあり、目が点になった。年齢制限があったとは…。私が山岳会に入ったのは47歳だから、昔の規則じゃ弾かれていたわ。

 

 その後の10年間、日本、海外山行とフル活動し、タイへ日本語教師として赴任。タイからは三度ほどネパールに行っている。ヒマラヤは素晴らしい。ヒマラヤの映像を見ながら山の絵を描いているが、あの神々しい荘厳さを表現するのは難しく、その存在はキャンバスにも収まらない。

 

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